Program for the Workshop for Unification and Development of the Neutrino Science Frontier (2015)

http://kds.kek.jp/indico/event/19967/
私は高エネルギー宇宙実験物理学の研究をしています。 研究者として一番興味を持っているのは、人間には作り出せないほどの大きなエネルギーに関わる現象です。 このような現象は地球上で作ることは難しいのですが、宇宙では様々な所で起きていると考えられています。 そのような宇宙における高エネルギー現象を観測し、そのメカニズムを解明していくことを研究テーマとしています。 現在は千葉大学理学研究科ハドロン宇宙研究センターにおいて、南極で行われているIceCube(アイスキューブ)実験、そして、やはり南極で進行中の超高エネルギーニュートリノ観測実験ARAに参加し、 宇宙からやってくるニュートリノを観測しています。 これまでには高エネルギー原子核衝突実験であるSTAR実験にも参加してきました。

IceCube実験

アイスキューブ実験は南極の1立方キロメートルの氷河を使って、宇宙からやってくる、高エネルギー宇宙ニュートリノ観測実験です。1キロ立方メートルの実験装置というと、代々木公園2個分以上の広さを持ち、高さはスカイツリー2個分、東京タワーなら3個分。そんな大きさの実験装置なのです。大きいです。この、大きさがこのアイスキューブ実験装置の特徴とも言えます。
なぜ、こんなに大きくなくてはいけないのでしょう。それは、私が調べている粒子ニュートリノは、非常に数が少ないからです。先ほど、非常に沢山の粒子が地球には飛んできていると書きましたが、実は、それは比較的エネルギー低い粒子の話です。私が探したい再高エネルギー粒子は1平方キロメートルのなかに、一年に一個、もしくはそれよりはるかに少ない量しか飛んでこないのです。大きな島に10匹しか生息しない小さな虫を探しているとしましょう。どうやって捕まえます? まず、罠を仕掛けますよね。それも島中に沢山つくり、まるで島が一つの大きな罠のように見えるほどにする必要があるかもしれません。1立方キロメートルの実験装置も宇宙ニュートリノを捕まえる罠です。 ニュートリノ自体は太陽や地球でも作られ毎秒数兆個以上もの私たちの体を通り抜けています。しかし、最高エネルギーの、天の川銀河の外の宇宙からやってくるニュートリノの数は非常に少ないのです。というわけで、測定するためには装置を大きくするしかなく、1立方キロメートルでもまだ小さいと、さらに大きくする方法を日々考えています。

実験の次なる特徴は南極の氷河を使うという点です。過酷な環境と思われている南極ですが、実は南極点周辺は、実験の邪魔になる、様々な人工的な雑音が少ない精密な宇宙物理実験・測定にとっては恵まれた環境です。また、南極というどこの国に属すわけでない存在は、宇宙と同様、国境を越えた自然科学の研究にぴったりな場所でもあると思います。アイスキューブ実験も、日本、アメリカ、ヨーロッパ、ニュージーランド、オーストラリアなどから200人以上もの物理学者が集まって研究している実験です。アイスキューブ実験では、検出器を氷河に埋めこむことでさらに雑音を減らしています。検出器のそばまで飛んでくるニュートリノはごくたまに検出器周囲の氷と衝突し、信号となる他の粒子を生成します。我々は、この信号となる粒子の軌跡を光として、検出します。このためには非常に弱い光を大きな信号として取り出す装置が必要で、このような装置を南極氷河地下1.5kmのところに埋設しています。

実験装置の建設は5年以上かけて行われ、昨年末の2010年の12月にようやく完成しました。その後、実験装置がちゃんと動いているかのテストなどを重ねて、5月から完成した装置での観測がはじまりました。それでも我々の予想する信号の頻度は多くても一年に2、3個です。1キロ立方メーターの装置の中の、年、2、3個の信号を効率よく探すための方法も、研究のテーマとして、日々考えていることの一つです。一つでもこの様な信号がみつかったら、宇宙物理学上の謎をとくための重要な一歩になることは確実です。

2012年、IceCube実験によって、初めての超高エネルギーニュートリノがみつかりました。 IceCube ニュース PeV エネルギー ニュートリノの発見

ARA実験

ARA実験は2011年にテストベッド試験検出器が埋設、2012年に一つ目のアンテナステーション、2013年までにさらにもう2つのステーションが埋設され、物理解析データの取得が始まった次世代南極超高エネルギーニュートリノ検出実験です。

STAR実験

連絡先

メールアドレス aya at hepburn.s.chiba-u.ac.jp

Curriculum Vitae



the last update 2013/10/1